参入障壁とは?自治体ビジネスで応札を阻む6つの壁と突破法

木藤昭久こんにちは!リクロスの木藤です。
自治体ビジネスのプロポーザルには参入障壁があります。
入札参加資格への登録、過去の実績、技術要件、評価基準など、BtoBの取引ではあまり意識しない条件が壁になることも少なくありません。
厄介なのは、公示されてからでは対策できない参入障壁があることです。
過去の実績が求められていても、公示後に実績をつくることはできません。特定の資格や認証が必要だと分かっても、すぐに取得できるとは限りません。
だからこそ、自治体ビジネスでは公示前の営業活動が重要になります。
私がこれまで複数企業へヒアリングした範囲では、公示前に自治体から仕様書について相談を受けていた企業の勝率は約80%でした。一方、そうした接点がなかった企業の勝率は0~15%程度でした。


これは統計的な調査結果ではありませんが、自治体ビジネスにおいて「案件が公示されてから頑張ればいい」とは言い切れないことを示す一例ではないでしょうか。
今回の記事では、自治体ビジネスにおける6つの参入障壁とその乗り越え方を解説します。



結論を先にお伝えすると、参入障壁はあります。それを乗り越えるには、公示前から営業活動を行うか、勝てる企業と組むことが重要です。
参入障壁とは
一般的に参入障壁とは、新しく市場へ入ろうとする企業の参入を難しくする制度、費用、技術条件などの総称です。
例えば、大規模な設備投資が必要な市場では、必要な資金そのものが参入障壁になります。特定の技術や許認可がなければ事業を始められないケースも同様です。
自治体ビジネスにもこうした参入障壁があるんですよね。
代表的なのが、実績や入札参加資格、所在地、技術要件などの「参加条件」です。
細かいことなので覚えなくてOKですが、地方自治法施行令第167条の5では、契約の種類や金額に応じて、実績、従業員数、資本金などを競争入札の参加資格として設定できるとしています。
さらに、第167条の5の2では、事業所の所在地や契約に関する経験、技術的適性などについて追加条件を設定することも可能です。
自治体からすれば、税金を使って事業を行う以上、「この企業に任せて本当に履行できるのか」を確認する必要があります。
そのための条件が結果として壁になるわけですね。
なぜ自治体ビジネスの参入障壁は「公示後」に変えにくいのか
入札やプロポーザルでは、公告・公募の時点で参加資格、仕様、スケジュール、審査方法などが示されます。
一般競争入札では、地方自治法施行令第167条の6により、参加資格や入札日時などの必要事項を公告することが定められています。
つまり、公示内容を確認してから、「実績要件を満たしていなかった」「入札参加資格に登録していなかった」「必要な認証を取得していなかった」と気づいても、その案件に間に合わせるのは難しいことがあります。
もちろん、公示された時点で受注企業が決まっているわけではありませんが、公示された瞬間に全社が同じスタートライン(受注確率)に立つわけでもありません。



自治体ビジネスに取り組むうえで必ず押さえておきたいポイントですね。
自治体ビジネスで参入障壁になりやすい6つのパターン
自治体案件への参加を難しくする要因は、案件によって異なります。
特に確認しておきたいのが、次の6つです。
- 参加資格:登録や実績、所在地などの要件を満たせない
- 特定者との随意契約:競争手続そのものが行われない
- 業務内容・仕様:技術や互換性などの条件を満たせない
- 予算額:自社のコスト構造では採算が合わない
- 評価基準:実績などの配点で自社が不利になる
- 準備期間:必要な資格や体制を公示後には準備できない
順番に見ていきましょう。
①参加資格:実績や所在地などが参加条件になる
まず考えられるのが、参加資格です。
自治体によっては、競争入札参加資格者名簿への登録が必要です。
また、案件によって、「過去○年間に同種業務の実績があること」「○○の資格を有する者を配置すること」「一定の地域内に事業所があること」などの条件が設けられる場合もあります。
特に重要なのが実績です。



書籍でも「実績 is King」と繰り返し書きました。
実績があれば必ず受注できるわけではありませんが、参加資格やプロポーザルの評価基準など、自治体ビジネスのさまざまな場面で実績が求められます。
そして、当然ながら、公示後に過去の実績を増やすことはできません。
だからこそ、自治体ビジネスへ参入する企業は「案件を探す」だけではなく、どうやって最初の実績をつくるのかまで考えておく必要があります。
②特定者との随意契約:そもそも競争に参加する機会がない
随意契約では、一般競争入札のように広く参加者を募らないケースがあります。
こちらも覚えなくてOKですが、地方自治法施行令第167条の2では、少額契約のほか、契約の性質または目的が競争入札に適さない場合など、随意契約が認められる条件が定められています。
特許や著作権、既存システムとの互換性などから、特定の事業者でなければ契約目的を達成できない場合には、他社が競争に参加する余地がないこともあります。
③業務内容・仕様:自社では満たせない条件がある
仕様書に定められた条件を満たせなければ、当然ながら参加できません。
例えば、
- 既存システムとの連携
- セキュリティ要件
- 必要な資格・認証
- 人員体制
- 特定の機能
などですね。
ここで大切なのは、仕様書を見てから初めて必要な条件を知る状態を避けることです。
過去の類似案件を調べれば、自治体がどのような条件を求めているのか、ある程度把握できます。入札情報サービスもありますが、ネット検索で十分です。
次回の公示までにサービスや体制を整えることもできるでしょう。
④予算額:受注できても儲からない
提案上限額や予定価格との関係で、自社では参入しにくい案件もあります。
必要な人員、出張費、開発工数などを積み上げると、自治体の予算では採算が合わないケースですね。
この場合、無理に価格を合わせる必要はありません。
自治体案件だからといって、赤字で受注していては事業として続かないでしょう。



「参加できるか」だけでなく「勝てるか」、さらには「受注する価値があるか」まで判断しましょう。
⑤評価基準:実績の配点で不利になる
プロポーザルや総合評価方式では、評価基準によって新規参入企業が不利になることがあります。
例えば、100点満点のうち実績に大きな配点が設定されていれば、自治体実績のない企業はスタート時点から点差をつけられます。
提案内容が優れていても、その点差をひっくり返せないことがあるんですよね。
だからこそ、募集要項だけではなく評価基準まで確認しておきましょう。
⑥準備期間:公示後では間に合わない
最後が準備期間です。
公示後でも、提案書の作成、価格積算、必要書類の準備などはできます。
一方で、
- 競争入札参加資格へ登録する
- 必要な資格や認証を取得する
- 専門人材を採用する
- サービス体制を整える
といった準備は、公示後では間に合わないことがあります。
自治体職員としては、公示から審査当日まで変に間を空ける必要はないので、間に合わない可能性にも気を付けましょう。



時期によってはデリバリーや公示ラッシュで繁忙期となり、工数観点でかなりきつくなると思います。
参入障壁を乗り越える3つの方法
では、参入障壁があるなかで、新規参入企業はどうすればよいのでしょうか。
私は、大きく3つの方法があると考えています。
①公示前から営業する
1つ目が、公示前から自治体へ営業することです。
私がこれまで複数企業へヒアリングした範囲では、公示前に自治体から仕様書について相談を受けていた企業の勝率は約80%でした。
一方、そうした接点がなかった企業では、勝率は0~15%程度でした。
これは統計的な調査結果ではありませんが、それでも、非常に示唆的な数字だと考えています。
公示前から接点がある企業は、自治体の課題や事業背景を理解しています。自治体側も、その企業の商品・サービスで何ができるのかを理解しています。
自治体職員が適切な仕様書を作るために、民間企業の知見を必要とすることは当然ながらあります。



自分で全て分かり、できるなら外注などしません。
事業者側が正しい情報を提供し、自治体側が事業を具体化していく。こうしたコミュニケーションを公示前から積み重ね、審査当日に芯を食ったプレゼンや質疑応答ができるようにしておきましょう。
②実証実験などから「片足参入」する
2つ目が、いきなり本格参入しないことです(私はこれを片足参入と呼んでいます)。


自治体実績がないにもかかわらず、いきなり大型のプロポーザルだけを狙っても、実績要件や評価基準で不利になることがあります。それなら、まず小さく始めればよいという考えですね。
まず1自治体で実績をつくり、その実績を横展開する。当たり前のことを書いていますが、自治体ビジネスではこの積み重ねが非常に重要です。
③「勝てる企業」と組む
3つ目が、すでに実績を持っている企業と組む方法です。
自社単独では越えられない参入障壁でも、他社と組むことで越えられる場合があります。造語なので覚えなくて構いませんが、BtoBtoGという選択肢も持っておきましょう。


公示前営業でやるべきこと
公示前にやるべきなのは、
- 自治体の課題を理解する
- 担当部署と接点をつくる
- 自社の商品・サービスを理解してもらう
- 自治体側が検討するうえで必要な情報を提供する
- 将来求められそうな資格・実績・体制を把握する
といった活動です。
もちろん、公共調達では公平性・透明性への配慮が必要です。
自治体の課題と調達の方向性を理解し、自社が将来の調達に参加できる状態をつくりましょう。
自治体ビジネスへの参入準備を自社だけで進める必要はない
自治体ビジネスでは、
- 対象自治体の選定
- 担当部署の特定
- 過去案件の調査
- 競争入札参加資格の確認
- アプローチ
- 商談
- 入札・プロポーザル
など、受注までにさまざまな工程がありますが、全てを自社だけで行う必要はありません。
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