指定管理者制度と直営方式の違いとは?関連業務経験者が解説します!

  • URLをコピーしました!
目次

はじめに

木藤昭久

こんにちは!リクロスの木藤です。

今回は、自治体が保有する公共施設の運営方式である指定管理者制度と直営方式について書いていきます。

どちらも施設運営の方法ですが、自治体営業において提案先の運営体制を把握しておくとより良いです。営業先が直営か指定管理かによって、提案先や判断スピード、導入ハードルなどが多少異なるからです。

本記事では公共施設全般を対象に、コスト・サービスの質・雇用形態・市民満足度・自治体の負担など、ざっと押さえておきたいポイントを網羅的に比較していきます。

私は市役所時代に文化課に所属しており、複数の指定管理者とやり取りしていました。現場感もありますので、何かあればお問い合わせください。

それでは見ていきましょう!

制度の概要

指定管理者制度とは

指定管理者制度とは、2003年の地方自治法改正で創設され、民間企業・NPO法人などが公共施設を運営できるようになった制度です。

施設の所有権は自治体に残したまま運営権限だけを指定管理者に委ねる形になり、契約期間中は指定管理者が管理・運営を担い、報告や評価を通じて自治体がモニタリングする仕組みです。

施設が指定管理に出されている場合は外郭団体への営業と似たような形になりますので、合わせてご覧ください。

直営方式とは

直営方式とは、自治体職員が自ら施設を運営する方式です。従来から主流だった方式で、安定性や公共性が強く、近年では指定管理から直営に戻す動きも一部で見られます。

人件費や運営工数は大きくなりますが、責任の所在が明確である点に信頼感がありますね。

指定管理と直営の比較

次に、指定管理と直営を比較して見てみましょう。

コスト

指定管理者制度では運営費や人件費の削減が期待されます。

民間企業やNPOなどが独自の運営ノウハウを活用して効率的な人員配置や予算管理を行うことで、全体コストが抑えられる傾向があります。特に、非正規スタッフの活用や設備維持管理の外注化などでコストメリットが出やすいです。

一方、直営方式では正規職員が中心のため人件費が高くなりやすく、予算上も固定費の割合が大きくなります。また、行政の予算執行は年度単位で柔軟性が低く、急な変更が難しいことから、結果として割高な運営になるケースも見られます。

サービスの柔軟性と質

指定管理者制度の利点のひとつが「柔軟なサービス展開」です。

民間事業者の創意工夫により、営業時間の延長やイベント新設、地域ニーズに合ったプログラム開発など積極的に行われています。契約上、利用者アンケートや定期報告も義務付けられており、改善サイクルも早いです。

直営方式では、サービスの安定提供が強みです。行政の基準に沿った形で公平性を重視した運営がされる一方で、新しい取り組みや変更は慎重になりやすく、住民ニーズに対するスピード感はやや欠けます。行政組織内の意思決定に時間がかかるため、目に見えるサービスの変化が少ない傾向があります。

職員の雇用形態と安定性

指定管理に出した公共施設では、職員の多くが契約社員やパートタイムといった非正規雇用となります。人件費を抑えるには有効ですが、給与水準や雇用の安定性の面で課題が出ることもあります。また、施設の指定が変わると雇用継続の保証がないため、経験者の流出リスクもあります。

一方、直営方式は自治体職員(正規職員)が運営を担うため、長期雇用・安定性の面では優れています。待遇も自治体の人事制度に則っています。ただし、異動によって専門性の蓄積が難しくなる点や人件費の増大は避けられません。

市民満足度の傾向

指定管理者制度では、サービスの柔軟性が市民の利便性向上に繋がるケースが多く、満足度も高まりやすいです。

特にイベントの多様化や、フレンドリーな対応を重視した施設運営により、ポジティブな評価が得られる傾向があります。ただし、運営事業者の質に差が出やすく、サービス水準が維持されないと一転して不満も高まりやすくなります。

直営の場合はサービスに劇的な変化は少ないものの、公的機関としての信頼感が強く市民の安心感に寄与しています。特に高齢者や常連利用者からは、直営の安定感を評価する声も聞かれるようです。クレーム対応も自治体が責任を持って行うため、責任の所在が明確です。

自治体側の負担

指定管理者制度では、施設運営にかかる日常的な業務を外部に委託するため、自治体職員の管理工数は大幅に削減されます。報告や監査を通じて管理・監督に集中できる反面、契約・仕様書作成や公募選定など、準備段階や更新時の負担はどうしてもある程度発生します。

直営方式では、施設の責任がすべて自治体側にあるため、日常管理から住民対応、事故・トラブル対応まで自ら行う必要があります。人員や予算の確保、管理プロセスの整備が求められ、施設数が多いほど担当課の負担は重くなります。

最後に

指定管理者制度と直営方式について書いてきました。

自治体営業において重要なのはベースの営業スキルですので、これらの知識だけで大きく成否が変わることはありませんが、現場の解像度を高めるきっかけとなれば幸いです。

今回もお読みいただきありがとうございました。

  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

1994年愛知県豊橋市生まれ。東北大学を卒業後、豊橋市役所へ入庁。文化課と中央省庁出向を経験後、リクルートで法人営業に従事。その後、株式会社リクロスを創業し、自治体営業の支援に取り組む。これまでの支援実績は設立1年目の企業から上場企業まで。また、分野は教育・環境・福祉・保育・観光・医療・広報・人材・ふるさと納税・公共施設など。

目次