自治体営業で求められる『実績』とは?無償・再委託でも実績になる理由

自治体が求めているのは「契約実績」ではなく「導入実績」
木藤昭久こんにちは!リクロスの木藤です。
自治体営業していると、「他の自治体で実績はありますか?」と聞かれることが非常に多いです。
この「実績」という言葉を、「自治体と直接契約した実績」と捉えている企業は少なくないでしょう。
しかし、自治体職員が確認したいのは必ずしも契約実績ではありません。より正確に言えば、「他の自治体が自社のサービスを導入した実績があるか」を確認したいケースが多い印象です。
例えば、自治体から直接100万円で受注したサービスと、自治体に無償で導入したサービスがあったとします。契約という意味では両者に大きな違いがありますが、「他自治体で導入されたサービスなのか」という観点では、どちらも実績として説明することができます。
再委託も同様です。元請け企業を介してサービスを提供したとしても、実際に自治体で自社サービスが導入されているのであれば、営業活動においては十分に実績として伝えることができます。



「契約実績」と「導入実績」を分けて考えることがポイントですね。
なぜ自治体は他自治体の導入実績を気にするのか
そもそも、なぜ自治体職員は他自治体での導入実績を気にするのでしょうか。ここを理解すると、「契約実績でなくてもいい」という話が分かりやすくなります。
自治体は民間企業以上に前例や実績を重視します。
新しいサービスを導入する場合、担当者一人が「このサービスは良さそう」と思えば契約できるわけではありません。課長や部長、場合によっては関連する他組織や財政課など、庁内(・庁外)の関係者に必要性を説明していく必要があります。
その際に、「全国で初めて導入します」と「すでに10自治体で導入されています」では、後者の方が圧倒的に説明しやすいのは言うまでもありません。
他自治体がすでに導入しているという事実から、「少なくとも他の自治体でも導入する価値があると判断されたサービスです」と説明できます。
つまり、自治体職員が実績を確認する大きな理由は、「この会社が自治体からお金をもらったことがあるのか」を確認したいからではなく、「他の自治体も導入する意思決定をしているのか」を確認したいからなんですよね。
書籍でもお伝えしましたが、自治体営業は単にサービスを売り込む活動ではなく、担当者が庁内で合意形成を進められるよう、説明材料を提供する活動でもあります。
他自治体での導入実績は、非常に強力な説明材料になります。自治体ビジネスは「実績 is King」と覚えておきましょう。
無償での導入でも説明材料になる
そう考えると、無償導入でも実績として活用できる理由が分かります。
例えば、自治体ビジネスへの参入初期に「まずは3か月間、無償で使ってみてください」と提案し、実際に自治体がサービスを導入したとします。
企業側に売上は立っていませんが、当然ながら「○○市で活用された」という事実は残ります。
次の自治体へ営業するときには、「自治体での実績はありません」ではなく、「すでに○○市で実証的に活用いただいています」と言えるようになります。



この違いは地味に大きいので、基本的に最初の数自治体は無償提供してでも実績を優先すべきです。
もちろん、無償導入しただけで何でも「実績」と言ってよいわけではありません。単に担当者へアカウントを発行しただけなのか、自治体として正式に実証実験を行ったのかなど、実態に合わせて正確に説明する必要があります。
ただし、「お金をもらっていないから実績ではない」と考える必要はありません。
むしろ、自治体ビジネスの参入初期は売上よりも実績を優先する選択肢を持っておくべきです。
知人の経営者が「BtoBの事業は5~7年で形になる」と言っていましたが、BtoGも短期で成果を追い求めすぎない方が良いと考えています。
参入初期は実証実験を有効活用し、中長期を見据えて実績を獲得しましょう。実績が積み上がってから、徐々に利益を重視する方向へ切り替えていけばよいと思います。
再委託での導入でも実績になる
再委託も同じ考え方です。
例えば、
自治体 → A社(元請け)→ 自社(再委託)
という形で業務を実施したとします。
自治体と契約しているのはA社なので、自社に「自治体との直接の契約実績」はありません。
しかし、自社のサービスやノウハウが実際に自治体へ提供されているのであれば、営業活動における導入実績としては十分に活用できます。
実際に、自治体ビジネスへの参入方法として、自治体に強い企業と組む「パートナー営業」はBtoBと同様に有効です。自社でいきなり営業から契約まで全てを担わず、パートナー企業に営業や契約を担ってもらい、自社はサービス提供に集中することで、負担を抑えながら実績を積むことができます。
ただし、実績の見せ方には注意しましょう。
再委託で参画したにもかかわらず、「○○市から受注しました」「○○市と契約しました」と表現すれば、事実と異なります。
「○○市の△△事業に参画」「○○市にて△△サービスを提供」「A社からの再委託として○○市の△△業務を実施」など、契約関係を誤認させない表現にした方が無難です。



実績は積極的に見せるが、事実以上に大きく見せない。このバランスを大事にしましょう。
ただし、入札やプロポーザルでは「契約実績」を求められることがある
ここまで「無償でも再委託でも実績になる」とお伝えしてきましたが、営業活動で使える「導入実績」と、入札・プロポーザルで求められる「実績要件」の別物なので気を付けましょう。
入札やプロポーザルでは、参加資格として過去の契約実績が細かく指定されることがあります。
例えば、「過去5年間に地方公共団体から同種業務を受託した実績を有すること」といった条件ですね。
このような要件が設定されている場合、無償導入や再委託の実績では参加資格を満たせない可能性があります。
実際、入札・プロポーザルでは「過去数年以内の同種業務実績」や「自治体における特定業務の実績」などが参入障壁になるケースがあります。民間企業向けにどれだけ豊富な実績を持っていても、条件を満たす実績がなければ参加できないこともあります。
なお、実績要件の書き方によっては、再委託での実績が認められるケースもあります。迷ったら担当職員に電話で聞きましょう。
「契約実績がないから参加できない」で諦めるのは早い
では、自治体との直接の契約実績を持っていない企業は、実績要件が設定されたプロポーザルには永遠に参加できないのでしょうか。
そんなことはなく、ここで重要になるのが公示前の営業活動です。
自治体はプロポーザルを公示する前に、事業内容を検討し、予算を確保し、仕様書や公募要領、審査基準などを作成します。
そして、仕様書を自治体職員が完全にゼロから作るとは限りません。事前のアプローチや商談、デモ、現地視察などを通じて得た民間企業の知見が、仕様書などに反映されることも珍しくありません(むしろケースとして多いと思います)。
例えば、自治体側が自社サービスの導入に前向きになっているにもかかわらず、自社では満たせない契約実績を参加要件に設定した場合、当然ながら自社はプロポーザルに参加できません。
自治体としても、導入を検討してきたサービスを提供できる企業が参加できなくなるような条件を、合理的な理由もなくわざわざ設定する必要がありません。
必ずしも必要な実績要件が外れるとは限りませんが、公示されて初めて「この実績要件では参加できない」と気付くのと、公示前から自治体とコミュニケーションを重ねているのとでは大きな違いがあります。



契約実績がないのであれば、なおさら公示後だけで勝負しようとしないことですね。
自治体ビジネスの参入初期は「実績ファースト」で考える
多くの企業はどうしても最初から売上を作ろうとします(もちろんビジネスなので売上は重要です)。
しかし、自治体ビジネスでは最初の数自治体の実績が、その後の営業活動を大きく左右します。
実績ゼロの状態で1自治体目を開拓するのと、すでに8自治体で導入されている状態で9自治体目を開拓するのでは、営業の難易度が全く異なります。
だからこそ、参入初期は売上や利益ファーストではなく、実績ファーストで考えてみてください。
そして、実績ができたら、営業資料やウェブサイトなどで積極的に見せていきましょう。実績を作り、その実績を次の実績に繋げていく循環を作れると、自治体ビジネスは一気に進めやすくなります。
繰り返しですが、自治体ビジネスは「実績 is king」です。









