BtoGとは?元市役所職員が語る自治体ビジネスの正攻法

はじめに
木藤昭久こんにちは!リクロスの木藤です。
BtoGとは、民間企業が全国約1,700の自治体に製品やサービスを提供するビジネスモデルのことを言います。
市場規模は約20兆円規模と言われ、地方自治体の発注の約75%が中小企業による受注です。大手でなければ戦えない市場ではなく、正攻法を知って動いた企業が着実に成果を出せる市場なんですよね。
自治体、中央省庁、そしてリクルートを経て独立起業し、自治体ビジネスを支援。行政の理屈と営業の論理の両方を肌感覚として持ち合わせ、ビジネスとして形にしている人物は執筆時点で日本で私だけだと思います。
(拙著『自治体ビジネスの始め方』秀和システム新社、2026年6月、p.3より)
「自治体は難しい」「コネがないと無理」「出来レースだ」などと思って動けない企業が多いですが、これらはほぼ全て誤解です。この記事では、私の実体験をもとに、BtoGの本質と参入するために本当に必要なことをお伝えできればと思います。
自治体ビジネス参入の正攻法を、元市役所職員・リクルート経験者に聞いてみませんか?創業2年半で20社以上の支援実績を持つリクロスが、自治体ビジネスへの参入・営業強化を検討している方に、ヒアリングとご提案をします。
BtoGとは何か、市場規模はどのくらいか
BtoGとは「Business to Government」の略で、民間企業が国・都道府県・市区町村などの行政機関に対して製品やサービスを提供するビジネスモデルです。道路工事や庁舎建設といった土木・建設分野だけでなく、ITシステムの導入・コンサルティング・イベント企画運営など「物品・役務」全般がBtoGの対象になります。
市場規模の大きさは、多くの企業が想像するよりはるかに大きいです。入札市場全体の規模は約20兆円にのぼります。ポイントとなるのは、地方自治体の発注のうち約75%が中小企業の受注という点です。
一度信頼を勝ち取れば、民間市場が冷え込む不況下でも継続的なパートナーとして関係が続きやすいことが自治体ビジネスの大きな特徴です。行政サービスは一度導入したサービスを簡単にストップできないため、継続発注に結びつきやすい構造になっています。
BtoGが今注目される理由
BtoGが今改めて注目されているのは、行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進と切り離せないでしょう。総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション推進計画第5.0版」(令和7年12月)では、生成AI・クラウド・データ活用など最新技術を積極導入する方針が明記され、IT・コンサルティング領域の民間企業にとって新たなビジネス機会が急拡大しています。
また、地方の人口減少と担い手不足という構造的課題を背景に、自治体が「民間のノウハウを活用した官民連携」を強化する動きが全国で加速中です。
出典:総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション推進計画第5.0版」、令和7年12月
BtoB・BtoCとBtoGの違いを整理する
BtoB(企業間取引)・BtoC(企業と消費者の取引)との最も大きな違いは、意思決定の構造にあります。
BtoBでは、担当者や経営層が自身の判断で購買を決めます。BtoCは顧客個人の感情や価格判断が中心です。
一方でBtoGでは、自治体が定める手続き・予算・議会承認というルールに基づいて意思決定が進みます。
自治体営業とは単にモノを売り込むことではなく、自治体が定める手続きに則った上で、職員が庁内や議会で説明しやすい材料を提示する「合意形成のサポート」に近い活動と言えます。
(拙著『自治体ビジネスの始め方』秀和システム新社、2026年6月、p.14)
中小企業がBtoGに参入できる理由
私が市役所で営業を受ける側だったとき、事業者選定で大手を優遇したことは一度もありませんでした。選定で大切なのは会社規模ではなく、実績の有無です。
実績ゼロでも参入できる理由と、自治体営業に向いている企業・担当者の3つの特徴を見ていきましょう。
実績ゼロでも参入できる
自治体との取引で最も大切なのは「実績の有無」です。逆に言えば、最初の1件さえ作れれば大手と対等以上に戦えるということです。
自治体ビジネスは実績が多い方が有利なのは間違いありません。庁内でロジックを積み上げて説得するよりも、隣の〇〇市で導入されている(≒庁内の予算要求も通り、議会でも承認され、実際に運用できている)という事実の方が圧倒的な説得材料となります。自治体との商談においても、「導入実績は?」と聞かれることは非常に多いです。
(拙著『自治体ビジネスの始め方』秀和システム新社、2026年6月、p.49)
参入初期は実証実験として無償提供を提案してでも実績を作ることを強く勧めています。1件の実績が2件目の扉を開き、2件目が3件目以降の横展開に繋がるイメージですね。
自治体営業に向いている企業・担当者の特徴
自治体営業では、特別な才能やセンス、強力なコネクションが必要なわけではありません。私はよく「公務員っぽさも営業力もある方が自治体営業に向いている」と言っています。具体的には、次の3つの特徴を兼ね備えている人が自治体営業で成果を出し、現場の職員からも深く信頼されると考えています。
(拙著『自治体ビジネスの始め方』秀和システム新社、2026年6月、p.16〜17)
第一に、シンプルに営業力がある人です。一般的なイメージと異なり、自治体営業で最も不足しているのは「自治体の知識」ではなく「接点回数と行動量」だと考えています。適切な頻度で接点を持ち続け、地道に信頼を積み重ねられる力は、どんな知識よりも武器になります。
第二に、自治体の雰囲気に溶け込める人です。見た目・態度・言動が自治体の雰囲気からかけ離れていると、それだけで営業活動にマイナスの影響が出ます。
第三に、注意力があり慎重に進められる人です。入札や契約における文書の読み間違い・手続きの解釈違いは、最悪の場合「指名停止」という致命的リスクに直結します。どれだけ営業力があっても、細心の注意を払えない担当者は自治体営業には向いていないと考えています。
BtoBとの決定的な違いは「合意形成」にある
自治体営業が難しく見える理由は、意思決定のプロセスがBtoBと部分的に異なる点にあります。
BtoBでは担当者や決裁者にアプローチして稟議を通してもらうという動き方が一般的です。しかし、自治体では同じ動き方をすると失敗します。
自治体の意思決定は個人の独断ではなく、ざっくりと担当者→財政課→首長→議会という階段構造で進みます。
自治体の意思決定の階段構造
営業が会う相手は基本的にまず担当者であり、提案内容を深く理解し、上司に説明する意欲を持ってもらえるかどうかが営業活動のカギになります。
(拙著『自治体ビジネスの始め方』秀和システム新社、2026年6月、p.25)
そのため、BtoBの常識である「できるだけ決裁者にアプローチ」をそのまま自治体に持ち込むのは危険です。担当者を飛ばして上層部に話を通そうとすると、現場が反発し、むしろ話が進まなくなるケースがあります。
「首長アプローチ」が裏目に出る理由
「首長や議員を押さえれば案件が取れる」という考えは、一般的な法人営業の常識を自治体に持ち込んだものです。しかし私が観測している範囲では、トップアプローチを理由に案件が決まるのはせいぜい一桁の自治体に限られます。
担当課が必要性を認め、財政部門が妥当性を判断し、最終的に調達手続きを通過しなければ、案件は成立しません。
(拙著『自治体ビジネスの始め方』秀和システム新社、2026年6月、p.51)
また「首長が言ったから」という理由で積み上げたロジックを吹き飛ばされることを、現場の職員はかなり嫌がります。役所でハードな仕事をこなし、説明責任を果たすために予算を編成している担当者の気持ちを考えれば当然のことです。
リクロスはBtoGマーケティング・自治体営業の支援会社です。企業の商材などを踏まえてどのアプローチ手法を、どの優先順位で、どのように実施すべきかなどアドバイスできるかと思います。興味がありましたらぜひお問い合わせください。
入札・プロポーザルから始めるBtoGの参入方法
自治体ビジネスへの低リスクな参入方法は、大きく3つのルートに分かれます。入札・プロポーザルへの参加、パートナー企業の活用、インバウンド営業です。参入初期にどれを選ぶかは、自社のサービス内容と目指す速度感によって決まります。それぞれの特徴と使い分けを整理します。
- 入札・プロポーザルへの直接参加
- パートナー企業の活用で参入リスクを下げる
- インバウンド営業で見込み顧客を引き寄せる
入札・プロポーザルへの直接参加
入札は複数企業が価格や条件を競い合い自治体が選定するものです。プロポーザルは価格ではなく、主に企画提案内容で評価が決まるコンペのようなものです。
重要な点は、プロポーザルに公示前から関与することが有利に働くという事実です。
自治体ビジネスとなると制度や仕組みに沿って機械的に営業活動を設計しがちですが、顧客の感情を起点に捉え直すべきです。ストレートに言えば、プロポーザル当日にいきなり参加してきた企業が受注するのを好ましく思わない職員は当時の私だけではないはずです。
(拙著『自治体ビジネスの始め方』秀和システム新社、2026年6月、p.62)
参加するには入札参加資格の登録が必要です。申請窓口は国・都道府県・各市区町村それぞれ異なりますが、まず入札情報サービスなどで案件を検索し、不足した資格や情報を集めてみることが第一歩になります。
パートナー企業の活用で参入リスクを下げる
自治体との取引実績があるパートナー企業を探し、協業や下請けの形で参入する方法です。最初から単独で入札に挑む必要はなく、既存の自治体ネットワークを持つ企業と組むことで参入コストとリスクを大幅に下げられます。
参入初期に実績を作る速度を上げるという意味で、パートナー活用はかなり現実的な選択肢の一つです。
インバウンド営業で見込み顧客を引き寄せる
ブログ・セミナーなどを通じて価値ある情報を提供し、自治体担当者が自ら問い合わせてくる状態を作るのがインバウンド営業です。拙著の中でも重要性を強調した手法で、(BtoBではあるものの)リクロスでも自社ブログやコンテンツ発信で見込み顧客のインバウンド獲得に成功しています。
インバウンド営業の強みは、問い合わせてきた担当者がすでにある程度の興味と熱量を持っている点です。架電・飛び込みといったアウトバウンド施策より商談の温度感が高く、導入可能性も高まりやすいです。
「自治体ビジネスは難しい」というのは誰の言葉か
自治体ビジネスに一歩踏み出せない企業の多くが、「難しい・特殊だ」という言葉を理由に挙げます。しかしこの言葉を繰り返しているのは、決まって自社のサービスへ誘導したい業者です。
成果を出している企業の共通点はシンプルです。必要な範囲の理解だけ押さえ、あとは実践しながら改善しているという点です。
(拙著『自治体ビジネスの始め方』秀和システム新社、2026年6月、p.57)
コネや人脈がなくても参入できる
自治体ビジネスに関わると「コネがないと無理」という言説をよく耳にします。しかしこれも誤解です。縦割り行政という言葉が示すとおり、自治体では部署ごとに担当が明確に分かれており、1人のコネで横断的かつスムーズに話が通ることはまずありません。
例えば私は市役所の「文化のまち」づくり課にいましたが、私とつながりがあるからといって隣の課に容易にサービスを導入できるなんてことはありません。
(拙著『自治体ビジネスの始め方』秀和システム新社、2026年6月、p.54)
コネに頼るより、正当な入札・プロポーザルへの参加と継続的な情報提供で信頼を積み上げる企業が最終的に複数自治体への横展開に成功していきます。
予算要求前だけに動くのは機会損失
自治体ビジネスでは「予算要求前に営業しよう」と語られることが多くあります。予算がなければ使うこともできないので、内容としては間違えていないのですが、年に1回・予算要求前だけにコンタクトすればOKと誤解しているのであれば非常にもったいないです。
(拙著『自治体ビジネスの始め方』秀和システム新社、2026年6月、p.59)
予算要求案の提出から実際の調達、契約に至るまで、半年から1年かかることは珍しくありません。その長い期間で一切コンタクトを取らないのは、競合に見込み顧客を渡しているようなものです。
(拙著『自治体ビジネスの始め方』秀和システム新社、2026年6月、p.61)
自治体は売り込みを待っているのではなく、困ったときに相談できる存在を求めています。予算要求前・入札時だけでなく、通年で有益な情報を提供し「合意形成のパートナー」として認知されることが、BtoGビジネスの正攻法です。
よくある質問
Q1. BtoGとは何ですか?
BtoGとはBusiness to Governmentの略で、民間企業が都道府県・市区町村など全国約1,700の自治体に製品・サービスを提供するビジネスモデルです。入札市場の規模は約25兆円(NJSS調べ、2025年)で、地方自治体の発注の約75%が中小企業向けです。単なる定義語にとどまらず、安定した公的資金と長期取引が見込める成長市場として注目されています。
Q2. BtoGとBtoBの違いは何ですか?
最大の違いは意思決定プロセスです。BtoBでは担当者や決裁者が独自判断で購買しますが、BtoGでは予算要求・議会承認・入札という厳格な手続きに沿って進みます。また、BtoBでは短期の成約も多いですが、BtoGは予算サイクルの関係で半年〜1年以上かかることが標準です。
Q3. 自治体営業で最初の実績を作るにはどうすればいいですか?
入札・プロポーザルへの参加、パートナー企業の活用、インバウンド営業(ブログ・セミナー)の3つが参入初期の有効な手段です。実績がない段階では無償での実証実験を提案することも1つの選択肢で、1〜2件の実績を作ることで営業活動の効率が大きく改善します。
Q4. コネや人脈がなくても自治体ビジネスに参入できますか?
参入できます。自治体は縦割り組織のため、1人のコネで横断的に話を通すことはほぼ不可能です。実際のビジネスを左右するのは特定の個人とのつながりではなく、正当な入札・プロポーザルへの参加と、継続的な情報提供による信頼構築です。
Q5. 自治体営業で予算要求前だけに動くのは正しいですか?
正しくありません。予算要求前だけに接触する企業は、年間のほとんどの接点機会を捨てています。自治体ビジネスは中長期の既存営業市場であり、通年で有益な情報を提供し「合意形成のパートナー」として認知された企業が受注を積み重ねます。
Q6. 自治体ビジネスは特殊で難しいという話を聞きますが本当ですか?
実態は異なります。「難しい・特殊だ」という言葉は往々にして自社サービスへ誘導したい業者の謳い文句です。自治体ビジネスの構造はBtoBと大きくは変わらず、相手を理解して提案内容を分かりやすく伝え、信頼関係を築く基本を高水準で実行できる企業が着実に成果を出しています。
Q7. 入札とプロポーザルはどちらから始めればよいですか?
自社サービスが価格だけで選ばれるコモディティに近い場合は入札、企画・提案力で差別化できる場合はプロポーザルへの参加が合います。いずれも参加前から自治体と接点を持ち、仕様書の段階から伴走する企業が有利です。公示後だけでなく、日頃からの情報提供と関係構築が受注確率を高めます。
最後に(まとめ)
BtoGとは、企業が自治体に製品・サービスを提供するビジネスモデルです。市場規模約25兆円、中小企業の受注割合75%という大きな市場です。「大手しか勝てない」「コネがないと無理」という思い込みは根拠のない誤解です。
大切なのは次の3点です。
- 実績を作ることを最優先にすること。自治体ビジネスは実績が正義であり、最初の1件が2件目3件目の横展開につながります。
- 通年で接点を持ち続けること。予算要求前だけでなく、有益な情報提供を通じて「合意形成のパートナー」として認知される企業が受注を積み重ねます。
- BtoBの基本を自治体に応用すること。行政は特殊な世界ではありません。相手の課題を理解し、担当者が上司に説明できる材料を提供し、信頼を積み重ねる。これを丁寧にやり切る企業が成果を出し続けています。
自治体ビジネスには正攻法があります。正攻法を知って動いた企業だけが、この約20兆円の市場でパートナーとして存続していけます。
一緒に市場を盛り上げていけるのを楽しみにしています。ぜひお問い合わせください。










